自作キーボードを始めるにあたって用意すべきツール
自作キーボードを始めてみたいけど、はんだごては買わないといけないとして、他には何を用意していいものやら……という初心者の方向けの記事です。
作りたいキーボードはどんなキーボードなのか?
キーボードのビルドにあたって準備しないといけないツールは、作りたいキーボードの種類によって異なります。 2019年3月現在、一般的な自作キーボードを製作が簡単なものから順に並べると、だいたい下記のようになります多分。
- ホットスワッパブルなのでキースイッチを手ではめるだけのキーボード
- キースイッチをはんだ付けするキーボード
- キースイッチだけでなく実装部品もはんだ付けしないといけないキーボード
- 手配線の(基板なしでキースイッチ間を自分で配線していく)キーボード
製作難易度順とかんたんに言っちゃってますが、3と4の間には結構な溝があります。 この記事を見るような人が手配線を考えるはずもないと思いますので、PCBにはんだ付けするキーボード前提で、1~3までのキーボードを作るにあたって用意すべきツールの説明を。
※この記事ではキースイッチやキーキャップ等のキーボード製作毎に必要となるパーツ類については触れていません。それらはツールではなく個別に準備しないといけないものですので……
準備するもの
1. ホットスワッパブルキーボードの場合
作りたいキーボードがPlanck Rev.6やUT47.2なんかのキースイッチをスワップできるタイプのものであれば、キースイッチとキーキャップさえあればキーボードが出来上がります。特に何も必要ではないです。キースイッチを交換するときのために、引き抜き工具を用意するくらいでしょうか。
2. キースイッチをはんだ付けするだけのキーボードの場合
Rev.5までのPlanckや、GH60,XD64,DZ60などの、キースイッチ以外の部品が予めPCBに実装されているタイプのキーボードの場合は、キースイッチの足2本をはんだ付けする必要がありますので、はんだ付けのためのツールを準備します。キースイッチLEDに対応したPCBの場合は2本足のLED(3mm or 1.8mm or 2x3x4等)を付けることになりますが、その場合もこれらがあれば製作できます。
はんだごて
温度調整機能が付いたはんだこてがおすすめです。初心者ほどちゃんとしたはんだこてを買わないと、後悔することになります。私は白光のFX600を使っています。
こて台
はんだごてをそのへんに置くのは安全や火災予防の観点から絶対NGです。コテ先の掃除ができるタイプのものなら、はんだ付け作業をする直前にこて先をきれいにできるのでいいです。
1.6Dこて先 または 2Cこて先
はんだごてを買った状態でついている円錐形よりも接触面積が稼げるため熱伝導性が高いこて先です。基板面のランドとキースイッチの足を素早く温めてはんだの濡れを良くします。つまり、カンタンにはんだ付けできるようになります。安いものですし、初心者の方は絶対に買うべきです。
作業マット
机の上でやるにしても燃えないマットが必要です。作業マットは細かな部品をまとめておくエリアも設けられていますので作業効率が上がります。
0.8mmの太さの60/40糸はんだ
糸はんだです。キースイッチを付けるだけならPCBのランドも広いですし、太さは1.0mmでもいいです。先々実装部品をはんだ付けするキーボードにもチャレンジしたいなら、0.8mmがおすすめです。ダイソーにも売っています。十分使えます。
はんだは大きく分けて有鉛はんだと鉛フリーはんだの2種類があり、健康にいいのは鉛フリーはんだなのですが、はんだ付け温度を高くしないとしけないため、低めでできるので有鉛はんだの方が初心者向けです。私は有鉛はんだしか使ったことがないのでよくわからないのですが……はんだ吸い取り線とかはんだ吸取り器とか
はんだ付けというのは、失敗するときは失敗します。で、リカバリしようと思ったときにはんだを吸い取る必要があるんですが、そのときにはんだ除去ツールが無いと詰みます。
3.実装部品をはんだ付けするキーボードの場合
ProMicroと呼ばれるmicro USB が付いた小基板や、ダイオード、抵抗といった部品をPCB(基板)に実装するためにはんだ付けをしないといけないキーボード(HelixやErgo42,crkbd,Mint60,Fortitude60,Let's Split,Iris,Nyquist,etc...)の場合は、上記に加えて以下のようなものが必要です。
ニッパー
ダイオードや抵抗の長い足(リード部品のリードといいます)をカットしたり、ProMicroを付けたピンヘッダーの余りをカットしたりで必要です。リード部品の足は細いですが、ピンヘッダーは1mm程度の太さがありますので、銅線切断能力が1.2mm以上はあるものが望ましいと思います。フジ矢のスモールニッパーは確実に切れて使いやすいです。 リード部品の足をきれいにカットしたい、というなら、エンジニアカッターもいいと思いますが、切断能力が銅線0.6mmのため、リード部品の足以外はカットしないほうがいいです。ピンヘッダーを切ろうとすると多分すぐにイカれます。
テスター(デジタルマルチメータ)
はんだ付けした部品がちゃんと電気的にくっついて導通しているか、とか、抵抗値を測ったりするのに使います。はんだ付け状態が適切か否かは見た目だけではわかりませんので、テスターを使用して確認します。スイッチを付けては見たものの、特定のキーが反応しないといったよくある不具合の原因を調べるのにもテスターが役立ちます。
フラックス
やにです。PCB面の「ランド」と呼ばれるはんだがくっつく金属面、パーツのはんだ付けしたいところに塗布すると、驚くほどスムーズにはんだ付けできます。HelixのRGB LEDの4極はんだ付けの際には大活躍しました。SMDダイオードを付ける際も作業性が上がるはずですので、一つ持っておくといいです。
フラックスは糸はんだにも含まれているのですが、長い時間はんだごてを当ててフラックス成分を飛ばしてしまうと、はんだにツヤがなくなり、ツノが生えたようになってしまうことがあります。そのような場合にもはんだにフラックスを塗布することで、はんだのツヤが戻り作業しやすくなります。ピンセット
SMDダイオードを付ける際などに活躍してくれます。またProMicroをPCBにはんだ付けする前にPCからファームを書き込んだりする際にも、ショートさせるために使えたりします。
サンハヤトのリードベンダー
リード部品の足をきれいに曲げるときに使えます。無くても全然なんとかなりますが、私はリードベンダーにダイオードをセットして一つ一つ足を曲げているときに心の平安を感じますので、買ってよかったなぁとしみじみ思います。
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Underglow(アンダーグロウ)と言いますが、基板の底面にRGB LEDストリップテープを配置して綺麗に光らせたりすることがあります。その際にテープにはんだ付けを行うために配線を剥く必要があります。カッターでももちろん剥けますが、力加減によっては誤って芯線の一部を一緒に切ってしまったりして、そのためにやり直すと長さが足りなくなってしまって結局また~~、みたいなことになりがちなので、ワイヤーストリッパーがあるととても楽です。挟む→握る→剥ける。
以上、国内で入手性の良さそうなツール・工具を紹介させていただきました。自作キーボードがんばっていきましょう!!