L2K ADAPTERSで好みのキーキャップを複製して遊ぶ
「キーキャップおもしろ!自分でキーキャップ作ってみたいなぁ! 」 と思い始めたときに、「L2K ADAPTERS」なるものを、Redditのr/MechanicalKeyboardsのスレッドで見つけました。
L2K ADAPTERSとは?
この写真に写っている何やらよくわからん土台から軸だけ生えている謎物体がL2K ADAPTERSです。左が1UのMX軸用で右がKailh Lo-Pro軸用。
「L2K」という名称は「LEGO to Keycap」の略です。LEGOを使ってキーキャップを作ろうぜ、というそのものズバリネーミング。
MX軸やAlps軸、Kailh Lo-Pro(Choc)軸、Topre(東プレ!)軸と、現在のキーボードの主流を占める4種類のスイッチに対応しています。
入手方法ですが、今のところは公式サイトのリンク先にあるShapewaysで3Dプリントをオーダーして購入する方法しかありません。私が注文したときは、オランダからの送料が$26くらいかかったのでTwitterで共同購入を持ちかけて購入しました。
名称に関して、ADAPTERSを付けると長いので、以降本ブログでは「L2K」と呼称します。
特徴
- LEGOのベースプレートにはめて使用し、上下の型の嵌合にLEGOの突起(スタッド)を使用する。
- 出来上がる型は全てLEGOのスタッドではめ合うため、上型と下型を自由に組み合わせ可能。つまり、SAプロファイルの上型とKailh Lo-Proスイッチの軸となる下型を組み合わせて、ロープロ向けの背の高いキーキャップを作成するための型、のような使い方もできる。
- 1Uのキーだけではなく、1.25U以上の大きなキーや横長のスペースキー、ISO Enterキーにも対応。*1
用意したもの
項目 | 品番・注記 | 金額 | 購入場所 |
---|---|---|---|
1UのMX軸スイッチ用L2K | L2K- MX-03 | $8 | Shapeways |
LEGOベースプレート 8×8 | 息子から拝借 | ¥152 | Amazon.co.jp |
LEGOブロック 2×6を12個 | 息子から拝借 | ¥50 × 12 | Amazon.co.jp |
ボークス造形村 透明シリコン1kg(硬化剤付き) | - | ¥4,990 | Amazon.co.jp |
Mr.シリコーンバリアー | VANCE VM008 | ¥857 | Amazon.co.jp |
加藤産業 真空保存庫 | VL-2B | ¥1,296 | Amazon.co.jp |
加藤産業 真空保存庫用ポンプ | VP-1B | ¥548 | Amazon.co.jp |
デジタルスケール | 0.1g単位が量れるもの | ¥799 | Amazon.co.jp |
紙コップ | - | ¥108 | ダイソー |
スポイトまたはストロー | 硬化剤を0.1g単位で垂らす用 | - | - |
つまようじ | 軸受に液を垂らす用 | - | - |
小筆 | シリコーンバリアー塗布用 | - | - |
筆洗い用シンナー | シリコーンバリアー除去 | - | - |
竹串(割り箸でもOK) | - | ¥108 | ダイソー |
木製粘土べら(割り箸でもOK) | - | ¥108 | ダイソー |
UVレジン液 | - | ¥108 | ダイソー |
UVランプ(36W) | - | ¥1,560 | Amazon.co.jp |
型の作成手順
1. 複製したいキーキャップを決め、L2Kにセット
L2Kの軸が折れたという報告をいくつか見かけましたのでキャップにはめるときにキツい場合は、L2Kの軸を予めホビーヤスリなどでヤスって抜けやすくしておいた方がいいかもしれません。私は軽くヤスりました。
また複製のベースとなるキーキャップはできるだけ軸がキツめで(未使用とか)、綺麗な無刻印キーキャップが望ましいと思われます。
軸はゆるいものをベースにすると、当然出来上がってくるキーキャップの軸もゆるいものになってしまいますし、ダブルショットの文字入りキーキャップをベースにすると、軸側(下側)の型に、文字用の模様が残ってしまいます。
2. L2KをLEGOのベースプレートにはめ、周囲をレゴブロックで囲む
L2K-MX-03(1UのMX軸用L2K)にDSAプロファイルのキーキャップを付けた状態。
上部シリコンの型取りサイズとしては、LEGOスタッドで5x5、高さが2つ分になりますね。
なおLEGO、L2K、キーキャップともにシリコンに貼り付くものではないため、シリコーンバリアーの塗布は必要ありません。
3. シリコンの必要量を計算する
必要となるシリコンの体積は計算で求められます。空間を実測すると、4cm x 4cm x 2cm = 32mlから、DSAキーキャップの体積分を抜けばいいくらいでしょうか。
このように計算してももちろんいいのですが、Twitterで @riv_mk さんが、SILICON CALUCULATOR というシミュレーターを発見してくれていました。
SILICONE CALCULATOR - Making a LEGO mold box and don't want to waste silicone? This is the calculator you need. https://t.co/8R6ASLqs3W おっこんな便利なものが. L2Kを使ったシリコン型取りで縦・横・高さのレゴブロック数を入力すると必要なシリコン量を計算してくれるらしい
— ROM子 (@riv_mk) August 10, 2018
今回の例で使い方を説明すると、以下のようになります。
- Box LengthとBox Widthにそれぞれ「5」を入力して、Box Heightを「2Brick」にして、「NEXT」
- Profileは「DSA」で、「1u」、L2Kは「03」で「NEXT」
- MOLD PART1でOvermix percentage(無駄になる分)のスライダを10%にすると、Silicone Volume: 28.99mlと表示され、上部で約29ml必要とわかります。さらに「NEXT」
- MOLD PART2でBrickの高さ「1.5」を選ぶと、下部で必要になるのが28.96mlと表示されます。*2
4. 透明シリコンを準備する
造形村の透明シリコン、硬化剤、デジタルスケール、紙コップ、竹串を用意しました。
このシリコンの硬化剤との配合比は10:1ですので、今回は主剤27gと硬化剤2.7gの合わせて29.7gで臨みました。
デジタルスケールに載せた状態でスタートし、主剤を竹べらで垂らしながら紙コップに入れてから、硬化剤をスポイトで必要量垂らし、目的の容量になったら、竹串でぐるぐるとよくかき混ぜます。泡だらけになりますが、どうせ後で脱泡するので気にせず混ぜ合わせます。
5. シリコンを流して、真空保存庫で脱泡する
シリコンをLEGOの囲いに流し込みます。真空保存庫で脱泡する際、液面が上がってこぼれますので、この写真くらいの分量までで留めておいた方がいいです。これでも多いくらい。
なお、流し込む前に硬化剤と配合したシリコンを真空保存庫で脱泡する方法もあるようです。今回のベースプレートは丸ごと入るので試していませんが。
真空保存庫とシュコシュコです。
丸ごと真空保存庫の中に入れ、シュコシュコして減圧します。私は120回くらいシュコシュコやって引張抵抗がけっこうきつくなってきたところでやめて、その状態で15分放置しました。(実は1回目は減圧が足りず、脱泡しきれず失敗しました)
(※その後真空保存容器の密閉度合いが下がってきたのか、120回では気泡が残ったりしたので、今となっては230回くらいシュコシュコやってます……)
透明シリコン注入後、真空保存庫120回ポンプしてからの脱泡の様子をiPhoneのタイムラプスで。
— や→ま→し↑た↓ (@hdbx) September 4, 2018
10分放置後再度10回ポンプ後5分放置の計15分です。 pic.twitter.com/Opd3ak7R1v
このシリコンは硬化剤を入れてから30分くらいで表面から硬化が始まるので、15分後に気泡が少し残った状態で真空保存庫から取り出します。しばらく待っていると、なぜか泡が綺麗になくなりました。
この状態でシリコンの硬化を待ちます。説明では硬化時間は24時間ということですが、室温28℃ 湿度60%の状況では、12時間もかからず問題なく硬化するようです。
6. 埋まったキーキャップとL2Kを取る
L2Kの底面にもシリコンが入っています。 キーキャップの中にまでシリコンが詰まっていました。外す際にはL2Kの軸を折らないよう気をつける必要があります。(その予防で軸を少し削っていますが) 続いて下部のシリコン型を作成するため、出来上がったシリコン型の中に元通りキーキャップを戻します。*3
7. LEGOの壁を作って再度埋めてシリコーンバリアーを塗布
順番的にはまずシリコン型を置いて、周囲にLEGOブロックを配置した方が、シリコン型の歪みが出にくいと思います。 このままシリコンを流すと、上下のシリコンが融合して、キーキャップを取り出すためにはシリコン型を破壊しないといけなくなるため、筆でシリコーンバリアーをキーキャップ以外のシリコン部分に塗布していきます。
塗ったところから速乾で乾いていきます。スタッドの穴や壁にもちゃんと塗ります。
8. LEGOブロックにセットしてシリコン注入、脱泡、硬化待ち
脱泡過程で軸受けの中にもちゃんとシリコンが入っていくとは思いますが、念の為先に爪楊枝で軸受けの中にシリコンを垂らしておきます。 脱泡して放置後、気泡が消えた状態です。やり方は上部型のときと同じ。硬化を待ちます。
9. 上と下にシリコンを分けてキーキャップを取り出す
キーキャップ入りの寒天和菓子が出来上がりました。
見た目は上下が一体化していますが、ちゃんとシリコーンバリアーを塗布できていれば、気持ちよく上の型と下の型に分かれます。
できた!
下部はこんな感じ(ホコリが汚いですが、あとでゲルクリーナーで綺麗にしました)
L2Kで作成した型が出来上がる瞬間を動画で撮影しました
— や→ま→し↑た↓ (@hdbx) 2018年9月5日
この気持ちよさを共有したい pic.twitter.com/aYBTOeg6gp
以上、型取り編でした!
続いて、UVレジンキーキャップ作成編へ
型からキーキャップを作る手順(UVレジン使用)
1. UVレジンをシリコン型の軸の中とキーキャップ側に注入する
ダイソーのクリアブルーです 気泡が……ちなみにこの気泡は真空保存庫では消えませんでした……
2. 軸受け側(下:Bパーツ)にレジンを入れ、UVランプに3分程度入れて硬化させる
3. 表面側(上:Aパーツ)にレジンを入れて、先に硬化させた軸受け側の表面にも少しレジンを塗って、貼り合わせる
4. UVランプに突っ込んで3分ほど待つ*4
5. 上下ひっくり返してまた3分待つ
6. 取り出してはみ出しをデザインナイフなどでカット。硬化が甘ければ再度UVランプへ。
右下はダイソーのミルキーグリーン。気泡を消さねば…… crkbdに付けてみた。我が子、かわいいです。
以上、L2Kを使用したキーキャップ製作の解説でした!