キーボードポエム2020

コミュニケーションがあった

 人と人

  身振り手振り

   目配せ

    声、言葉

     文字

      紙とペン

       こどもたちはサンタクロースに手紙を書き

        プレゼントを夢にみる  
 
 
人語を解さぬ関係もある

 馬と人

  手綱、拍車、鞭、鞍

   橇に乗ったサンタクロースは赤鼻のトナカイに鞭を入れ

    こどもたちの眠る暖かな家の煙突を目指し夜空を駆ける  
 
 
そして一方的な命令

 機械と人

  0と1

   入力装置

    キーボード

     オンラインストアにキーを打ち込むと訪れる彼もサンタクロースか  
 
 
指先から機械へと伝わる言葉

 なにゆえに惹かれるのか

  自らの打鍵が命令となって眼前のモニタに映し出されるから

 鍵を打つ指は心地よさに弾み

  その調べを聞く耳は安息を覚え

   何にも比肩し難いその美しい佇まいを見る目は時を忘れ

    心は所有の喜びにわななき震える
 
 
 
或る者は打鍵を極めんとキースイッチの沼を彷徨い

 また或る者は究極の音を鳴らすキーボードの構造に思索を巡らせる

  取り憑かれたかのようにキーキャップを着せ替える者

   アルチザンなる異形のキーキャップに魂を奪われし者

    自らの手で絶望の淵から新たなる鍵盤を生み出す狂気の者

  いつしかキーボードは自身が一介の入力装置に過ぎなかったことを忘れ

   ステッカー、バッジ、ポスター、アパレル、バッグ、TVメディア

    その活躍の場を無軌道かつ向こう見ずに広げ

     今やひとつのカルチャーとしての地位すらをも獲得しようとしているのだ
 
 
 
           そうだったのか

           漸く気がついた

 
 
    おれがキーボードを使役し命令していたのではなかった

     キーボードこそがおれを使役し命令していたのだ

  道理でおれのキーボードを求める衝動は最近のおれらしくはなかった

    まるでサンタクロースに贈り物をせがんだあの頃のような

 あれはキーボードがおれをして仲間を増殖せんと企てた所為だったのだ

 おれはひとたまりもなくその策略に嵌り今のおれとなってしまつたのだ 
 
 
 
          あゝキーボードが欲しい
 
 
              シュワキマセリ

 目覚めた朝には、枕元の靴下の中に何を見るのか、それとも見ないのか  
 
  

           メリー・クリスマス

 
 
 
この詩は キーボード #1 Advent Calendar 2020 - Adventar の12/25の記事であり、
ALETH42 [switch: Alpaca w/GPL205g0,GPL105,TX film / cap: Infinikey HIVE] を
用いて書かれたものです。